仮想化

日本電子専門学校

 



 

1951年の設立以来、一貫して先進性に富んだ学科を編成し「伝統」と「革新」を融合する教育を実践してきた日本電子専門学校。同校では「職業教育」と「キャリア教育」の2本の柱を教育方針に、産業界で必要とされる最先端の知識と技術を教えてきた。約70年におよぶ歴史の中で、数多くのプロフェッショナルを社会に送り出してきた同校だが、その中でも「CG・映像分野」学科の卒業生は、映画やゲーム、アニメーションなどの有名作品にCGクリエイターとして数多く参加している。その「CG・映像分野」学科で学ぶ学生のためのCG環境に、vGPU-VDIが採用され最先端のCG教育を提供している。

 

チャレンジ
オートデスク(Autodesk)社の仕様書がきっかけで
最先端の環境に挑戦

日本電子専門学校のCG・映像分野学科における R&D を担当する浦正樹氏は、CG教育の現場にNVIDIAの仮想GPUソリューション(NVIDIA vGPU)を導入した経緯について、次のように振り返る。

「きっかけは、vGPU-VDIでAutodeskのMayaが通常通りに動く、というオートデスク社の仕様書を目にしたことでした。それまでは、VDI環境をシンクライアントで利用する程度の知識はありましたが、NVIDIA vGPUの技術について調べていませんでした。その後、2018年に私の上長が海外研修でカナダのバンクーバーに行き、イメージワークス社のCG制作現場でVDIが使われているのを見て、それが決定打となり当校でも採用しようと検討を開始しました」

高校時代にCOBOLによるプログラム開発を経験し、日本電子専門学校でCGを学び、現在は同校で教壇に立つ浦氏は、豊富なITの知識と経験を買われて、CG制作に使われるワークステーションやサーバー環境の構築にも携わってきた。そしてvGPU-VDIの可能性を知ったことで、CG教育の現場が大きく変わると感じたという。なぜなら「vGPU-VDIを検討する前は、900番台のNVIDIA GeForceを搭載した非推奨環境で、Mayaが動く実習室を構築している状況でした。その環境をvGPU-VDIで仮想化できたら、高性能なグラフィックリソースを効率よく授業で使えるようになり、ワークステーションのメンテナンスや運用も劇的に改善されると期待しました」と浦氏は話す。

こうした背景から、浦氏を中心としたvGPU-VDIの導入プロジェクトが2018年の後半にスタートした。当初は2019年内にシステムを構築する計画だったが、予定は少し遅れてしまう。その一因について浦氏は「最初のパートナー選定に問題がありました。vGPU-VDIを構築した経験のないシステムインテグレータに相談したのですが、レスポンスが遅く機器構成なども具体的な提案が得られませんでした。そこで、展示会で知り合った株式会社アスクに相談したところ、ASUSのサーバーでvGPU-VDIを構築した実績があることから、導入パートナーとして協力してもらうことにしました」と説明する。


 

ソリューション
Mayaとの互換性を最優先にNVIDIA T4 GPU を採用

2018年からスタートしたCG教育環境のvGPU-VDI導入は、2019年にプロトタイプによる構築を完了した。しかし、実際の導入にはそこから約1年の時間を要した。その理由について浦氏は「実は、2019年に校舎の一部スペースを改装する計画が持ち上がりました。新たに改装される部屋は、地下にあったので、vGPU-VDIのサーバーを設置するのに最適な環境だと考えました。そこで、その改装が終わるまで、サーバーの導入を延期しました。その結果、最新のNVIDIA T4 GPUを8枚搭載できる2UサーバーでvGPU-VDIを構築できたので、当初の計画よりもコストパフォーマンスに優れた仮想化環境を導入できました」と振り返る。

構築されたvGPU-VDI環境は、3台のASUS製 ESC4000 G4サーバーに8枚のT4GPUを搭載し、最大で40名の生徒と数名の教員がMayaによるCG制作の授業を実施できるパフォーマンスを実現した。

「実習室のワークステーションは、すべてシンクライアント端末に変更、2台のディスプレイを接続、デュアルディスプレイでシンクライアント端末から、ネットワーク経由でサーバールームの仮想環境で稼働するvGPU-VDIに繋いで利用しても、ローカルのワークステーションと遜色ないパフォーマンスを実現しています。今後は他の実習室への展開、自宅からの利用も可能にしていきたいと考えています。実習室内の電力や室温も下がり、環境面でのメリットも感じています。また、IT環境を管理する側としては、学生や教員が利用中に”環境がおかしい”と相談が来た際に現地に行かなくても、どこからでも対応できることは、とても助かっています。」


 

リザルト
Omniverseも活用し
プロのCG制作現場にも影響を与えていきたい

今後の取組について浦氏は「T4 GPUによるvGPU-VDIは、ハードウェア的には満足しています。今後の課題は、私自身がVMware Horizonを使いこなして、より柔軟に効率よく仮想化リソースを配分したり、コントロールできるようにならなければと考えています。将来的にUnreal EngineやHoudiniへの展開や、希望があればAI分野をはじめとしたIT関連学科への導入についても推薦したいと考えているため、やはりリソース管理をしっかり把握していくべきだと感じています」と話す。

さらに、浦氏は「先日のGPUテクノロジーカンファレンス(GTC)で公開されたNVIDIA Omniverse™(オムニバース)に興味があります。Omniverseが実現するUSDによるデータ交換と、さまざまなワークグループやスタジオをつなげる仮想コラボレーションが実現されるようになれば、CG制作の現場も大きく変わっていくでしょう」と期待を膨らませる。そして「当校としてもOmniverseの早期トライアルに参加して、実際に使ってみたいと考えています。採用したvGPU-VDIでのリモートCG制作環境を活用し、企業間の連携や社会人の学びの場としても呼び込みたいです。また学生や教員だけではなく、すでにプロのCGクリエイターとして活躍している卒業生も巻き込んで、日本のCG制作環境を世界水準に引き上げる一助になればと思っています」と浦氏は展望を語る。