LLM(大規模言語モデル)とは何か?生成AIとの違いやできること、活用例などを紹介
目次構成
- LLM(大規模言語モデル)の概要
- LLMと類似用語の相違点
- LLMの基本的な仕組み
- LLMの活用事例6選
- LLMの代表的なモデルの種類
- LLM活用時の注意点
- 導入時のハードウェア(GPU)の選び方
- LLMの精度を向上!高性能GPUのご紹介
LLM(大規模言語モデル)の概要
LLMとは
LLMとは「Large Language Models」の略であり、日本語では「大規模言語モデル」と呼ばれています。大量にあるデータセットと機械学習の手法である「ディープラーニング」の活用によって構築された自然言語処理モデルになります。
この「言語モデル」とは、人間が使っているような自然な文章を生成するために、言語に特化して単語の並び順に確率を割り当てていく仕組みであり、LLMは通常の言語モデルよりも膨大なデータなどを使用して構築されていることから「大規模」と付けられています。
具体的には、「データ量(入力される情報量)」「計算量(コンピュータが処理する仕事量)」「パラメータ数(ディープラーニング技術に特有の係数の集合体)」が大規模である点が特徴です。
LLMが注目されている背景
LLMはAIが到達できないと言われていた人間の言語能力を身に着けることが可能になったと大きな話題を集めています。
実際にLLMは大規模なデータを基に自然言語処理を行うことから、自然な会話と変わらない流暢なやり取りや、自然言語における多くの処理を高精度で行うことが可能であり、昨今、ビジネス分野・教育分野などで活用が進められています。
LLMと類似用語の相違点
注目が集まっているLLMですが、昨今はさまざまな人工知能技術が登場しており、それぞれの違いがよくわからないという方もいるのではないでしょうか。
そこで以降ではLLMと類似する用語の相違点をご紹介します。
LLMと機械学習の違い
機械学習とは、大量のデータを読み込むことでパターンやルールを認識・学習させ、予測や判断を実現させる手法です。機械学習には、自然言語処理だけではなく、画像処理や画像認識、音声認識があり、LLMは機械学習を応用した1つの仕組みになります。
具体的には、機械学習を応用させたものが深層学習(ディープラーニング)や生成AIであり、LLMは生成AIの中でも言語(テキスト)データに特化した分野になります。
以下記事では、機械学習を応用した深層学習(ディープラーニング)について解説しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。
LLMと生成系AIの違い
昨今、耳にする機会が多い「生成AI」ですが、にLLMは生成AIの一種なります。
LLMは主に適切の分類や生成、文章要約、テキストでの質疑応答などテキスト処理に特化しており、与えられたテキストデータに基づいて予測を行います。一方で、生成AIはテキストに限らず、画像や動画、音声などを生成するAI技術全体を指しています。
LLMと自然言語処理の違い
先述したようにLLMは機械学習の一分野である「自然言語処理」のモデルの一種になります。
自然言語処理は、言葉の通り自然言語を処理する技術のことを指し、LLMはこの自然言語処理を活用し、テキスト生成を行うことを言います。
そのため、LLMは別名で自然言語生成AIとも言われています。
LLMの基本的な仕組み
以降ではLLMのモデルの仕組みや実現できることをご紹介します。
LLMのアルゴリズム
LLMが機能するために重要な要素として以下2つがあります。
Pre-Training:膨大なテキストデータセットを使用した事前学習
Fine-Tuning:性能を調整する微調整
LLMではこの2つのプロセスが段階的に行われます。そしてプロンプト(指示や質問)を受け取ることで、エンコードが行われ適切な応答が生成されます。これらの処理をスムーズに行うためには、大量の並列処理に対応できる高度なGPUや大容量のストレージが必要になります。
LLMが対応できること
LLMはテキスト生成に特化しており、対応できることとしては以下が挙げられます。
- 質問への回答
- 文章の要約
- 感情分析
- 機械翻訳
- キーワードの抽出
- 入力データの整理
- 文章作成
- 入力されたプログラムのバグチェック
- プログラムのコード生成
上記のようなタスクはこれまで人間にしか行うことができないとされていましたが、LLMはあらゆるテキストの処理を実現しており、従来の業務をサポートする技術として注目されています。
LLMの活用事例6選
前章では、LLMで実現できることをご紹介しました。以降では、実際にどのような現場にて活用されているのか、活用事例をご紹介します。
チャットボットシステムによる顧客への問合せ対応
1つ目は、顧客の問い合わせ対応といったカスタマーサポートにおける活用です。
従来は、顧客の問い合わせは電話で対応しているケースが多く、人の手によるため負担が大きく、対応の品質も担当者に依存するものでした。また、人の手では24時間での対応が難しく、顧客問い合わせの分析も手間がかかっていました。
そこで、近年では問い合わせに自動で対応できる「チャットボットシステム」の導入が多くの企業で進んでおり、そのチャットボットシステムにおける適切な回答テキストデータの生成に、LLMが大きく貢献しています。
また、チャットボットシステムでは過去の問い合わせ内容が収集されていくため、LLMの回答精度が継続的に上がり続け、顧客のニーズに柔軟に対応できるというメリットがあります。
アプリケーション開発
2つ目は、アプリケーションの開発です。
従来は、専門知識を持つ開発者が実際にコードを記述することで開発が行われていましたが、多くの費用がかかったり、品質にばらつきが出てしまったりする課題がありました。
しかし、LLMを活用したアプリケーション開発によりコードが自動生成され、開発作業の自動化が進んでいます。またコード生成だけではなく、テストやデバックなどもLLMによって自動化できます。
注意点としてLLMでのアプリケーション開発は、LLMを効果的に活用するためのプロンプトエンジニアリングのスキルが重要になります。
コンテンツ制作
近年、記事や広告といったコンテンツ制作のサポートとしてもLLMの可能性が高まっています。
例えば、LLMに記事のキーワードを提示することで、そのキーワードに沿ったSEO記事の目次や文章を作成したり、商品名やターゲットを提示することで、その商品に合ったキャッチコピーを作成したりすることが可能です。
競合データ分析
従来の競合データ分析は、専門家が膨大な量のテキストデータを手作業で分析し、競合企業の戦略や強み・弱み、自社との差別化ポイントなどを導き出す方法が主流でした。しかしこの方法は多くの人手と時間がかかり、また客観性に欠けるというデメリットがありました。
一方で、LLMでは、大量のテキストデータを高速かつ自動で分析することで、人手と時間を削減し、客観的な分析結果を導き出すことが可能です。具体的には、製品レビュー、口コミ、ニュース記事などから、競合企業の製品・サービスの評判や強み・弱みを分析したり、顧客ニーズ、市場規模、競争環境など、市場動向を分析したりすることが可能です。
社内データの探索
従来社内のデータを探索する際には、自らの手で検索し、検索した内容を確認したうえで、情報を取捨選択する必要がありました。
一方LLMでは、検索したい情報の関連キーワードを入力するだけで、膨大な社内データから必要な情報を抽出し、要約して提示することが可能になり、手間を大きく削減できます。
こういった情報検索の利便性から、LLMはビジネスにおける生産性の向上や経営判断のスムーズ化に役立っています。
学習カリキュラムの作成
LLMは教育分野にも大きな変化をもたらしています。
例えば、従来は教員が授業や教材作成といった学習カリキュラムの計画を練り、生徒それぞれの習熟度に応じて、個別に対応していくことが一般でした。
昨今では、LLMを活用することで、教材やテストの作成の効率化が可能になりました。また授業やテストにて生徒の現状の理解度・興味度などがLLMに伝えられることで、生徒に個別最適化された学習カリキュラムの提示もできます。
LLMの代表的なモデルの種類
現在LLMにはさまざまなモデルがあり、ご紹介したような事例にて活用されています。
本章では、LLMの代表的なモデルを一覧で紹介します。
| モデル | パラメータ数 | 特徴 |
|---|---|---|
| BERT | 3.4億 | Googleが提供するデータセットの規模を増やし精度を向上させた大規模言語モデル。初期のモデル。 |
| GPT-3 | 175B | OpenAIが提供するTransformerをベースとし、文書生成に特化したモデル |
| GPT-4 | 非公開 | GPT-3に、画像や音声などテキスト以外のさまざまデータを学習させたモデル |
| MPT-7B | 67億 | Mosaic MLによって1兆トークンのテキストとコードでトレーニングされたTransformerであり、商業利用が可能 |
| LLaMA | 70~650億 | Metaが提供。GPT-3と同等の性能を、圧倒的に少ないパラメータ数で実現。 |
| Alpaca | 70億 | スタンフォード大学がLLaMAをベースとし、Instruction-following(指示実行)の結果を使ってファインチューニングしたモデル |
| Vicuna | 未公開 | カリフォルニア大学が LLaMAをベースに、ChatGPTとユーザの会話を学習させたチャットボット |
| Flan-UL2 | 200億 | Googleが2023年に公開した言語モデル |
| Dolly-2.0 | 120億 | Databricsが提供する無料で商用利用も可能なオープンソースの大規模言語モデル |
| Jurassic-2 | 1,750億 | AI21 labsが公開した世界最大の大規模言語モデルの一つ |
LLM活用時の注意点
LLMは革新的な技術ですが、活用における注意点やリスクも存在します。以降ではLLM活用において知っておくべき注意点を3つご紹介します。
出力精度が偏る可能性がある
LLMの出力精度は学習データの量に依存しています。そのため、求める回答によっては出力精度に偏りがあったり、質問へのピンポイントな回答が困難であったりする場合があります。
対策としては、LLMの出力内容を事前にチェックし、不適切な内容を検出して削除や修正を行うフィルタリングがあります。ただし、現状人が手で行うケースもあり、多大な人的リソースと時間を要するデメリットがあります。
ハルシネーションの恐れがある
LLMは非常に高性能であることから、学習データが少ない場合において、もっともらしい偽情報を生成する「ハルシネーション」と呼ばれる問題があります。
例えば、特定の人物を紹介してほしいと指令を出したら、事実と異なる情報を組み合わせて偽の回答を出力し、予備知識がない人はそれが本当の情報だと思い込む可能性があります。
ハルネーションが起こりやすいケースの研究は進められていますが、活用する際はハルネーションの存在に注意し、プロンプトの工夫や提示された情報の取捨選択が必要になります。
セキュリティ上のリスクが存在する
LLMが非常に優秀であることから、犯罪に活用されるリスクも大きくあります。各モデルに悪意あるプロンプトを入力し、情報漏えいをはじめとするセキュリティ上の問題を発生させたり、不適切な出力内容が生成されるよう仕向けられたりする可能性があります。具体的には、以下のようなケースが挙げられます。
●プロンプトインジェクション・・・機械学習モデルを乗っ取り、不適切な指示やデータを与えて特定の情報へのデマや不適切な回答が出力されるよう操作する。
●プロンプトリーク・・・モデルの事前学習で使用された、本来公開されるべきではないトレーニング用のプロンプトを引き出す。
●ジェイルブレイク・・・悪意あるプロンプトによって、事前に調整されたモデルの制限を外す(例:中立的な立場から回答するよう調整されたモデルを妨害し、極端な思想に基づいた回答を得られるようにする)。
現在これらの防止のために、不適切なプロンプトからの攻撃を防止する仕組みの構築が進められていますが、このようなリスクがあると把握しておきましょう。
ここまでLLMについて説明してきました。LLMのような大量の並列処理には従来のCPUでは対応しきれないため、導入時にはコンピューター内の画像処理装置であるGPUの選定が非常に重要になります。
しかし、AIに関するインフラを整備する際に、どのような構成案でサーバ設備を整理すればいいかわからないと迷う方もいらっしゃるのではないでしょうか?そこで、GPUの選び方について次章で紹介します。
導入時のハードウェア(GPU)の選び方
基本的には、GPUは新しいモデルであればあるほど性能が良くはなりますが、最新のハイエンドモデルとなると相応の価格になります。そのため、費用対効果を比較し、予算内で可能な限りのハイスペックの製品を選択することが重要です。特に下記を確認しておくことをおすすめします。
●複数のGPUを搭載しているか・・・GPUの数が増えすぎると消費電力が上がるため注意が必要ですが、複数のGPUを搭載しているほど性能は上がります。
●VRAM容量が大きいか・・・VRAMとはGPU専用のメモリーで処理できる容量を示しています。容量が大きいほどハイパフォーマンスが出せます。
●冷却性能が優れているか・・・適切な熱処理はパフォーマンスに大きく影響するため、効率的に冷却できるGPUの選定が重要です。
●低消費電力か・・・GPUやグラフィックボードの性能が良いほど消費電力は大きくなるため、性能だけでなく消費電力も考慮してGPUを探しましょう。
LLMの精度を向上!高性能GPUのご紹介
LLMの精度を担保するためには、学習データと複雑な計算処理の量・質がポイントになります。
また、事前学習を効率的に行うためには、使用環境や目的に合わせた高性能なハードウェア(GPU)が必要不可欠です。
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